B&Gな日々

B&G財団っていう団体のスタッフが書く、徒然なるブログ

すべての人が笑顔でいられる社会に

B&G財団 事業部海洋教育課
木上源太(京都府南丹市 自治体派遣研修生)

 

皆さんは、「特別支援教育」という言葉をお聞きになったことがありますか?
学校教育法の改正により、平成19年から使われるようになった言葉です。
特別支援教育とは、障害(発達障害 注1 を含む)のある子供の自立や社会参加に向けた主体的な取組を支援する視点に立って一人一人の教育的ニーズを把握し、その持てる力を高め、生活や学習上の困難を改善又は克服するため、適切な指導及び必要な支援を行うものです。

 

以 前、私は中学校の特別支援学級で担任を経験したことがあり、塾講師や教育委員会の職員としても様々な子供たちと触れ合いながら、色々なことを学んできまし た。現在は、2015年度のB&G財団自治体派遣研修生として、これまでとはまた違った角度でたくさんの子供たちと接しています。


10月の時点で研修生活も半年が過ぎましたが、その中で特に印象的だった事業が、夏場に都内各地の小学校で実施した「水辺の安全教室」 注2 でした。

 

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「水辺の安全教室」で初めてのカヌーを楽しむ児童。
このようなマリンスポーツが自分たちの学校のプールで行えることに、誰もが喜んでいました

 

 

仲間を支える子に感動

「水辺の安全教室」でとても印象深い出来事が起きたのは、ある小学校の高学年学級がプールでカヌー体験をしていたときのことでした。

スタッフとしてプールの監視を行っていた私は、支援が必要な子の存在に気付いたので、他の子よりも注意して目を配っていると、その子のバディが 注3 「こうやるんだよ」と、とても丁寧に言葉をかけながらその子を導いていました。

また、その子がやる気をなくしたときは自ら駆け寄って根気強く声をかけていたので、その子の特性を非常に理解していることが伝わってきました。

 

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バディを取る子供たち。お互いに支え合う気持ちが芽生えます

 

そんなバディのおかげもあり、その子は少しずつカヌーに慣れていき、やがて楽しそうな表情を見せるようになっていきました。また、カヌーで自信をつけたのか、後に行われた背浮きなどのプログラムについても、怖がりながらも積極的にチャレンジしてくれました。

これは、特別支援学校などではなく、ごく普通の公立小学校であった出来事です。特別な支援が必要な子への理解が、通常学級のクラスメイトの間に浸透していることを本当にうれしく思いました。

また、支援が必要な子でも周りの人たちが理解を示して必要な手立てをすることで、様々な体験が楽しめるということを改めて感じました。


第二段階に進みたい周囲の対応

文 部科学省の調査によると、小中学校で特別な支援を必要とする児童生徒(特別支援学級)は平成12年に約7万人を数えましたが、平成19年には約11万人へ と大幅に増加。また、同年の学校教育法の改正によって、「特殊教育」から「特別支援教育」への転換が図られ、さらに大きな枠組みで特別な支援を必要とする 児童に対応するようになって以降、平成26年には約18万人と大きくその数を増やしています。

子供の数が減ってきている中、特別な支援を必要としている子供の数が増えていることには様々な理由があると思います。

たとえば、法改正などにより発達障害などの周知がされ、これまで認知されていなかった障害が知られるようになったこともそのひとつと考えられます。つまり、正しい理解までには至ってないにしても、そのような障害の存在を多くの人が知るようになったということです。

もっとも、それは社会的な受け皿の第一段階であり、これからは第二段階として単に知るだけでなく、しっかりと理解して様々な社会生活の場面で対応できる人が増えていく必要があります。

そうなることで、支援が必要な子が水辺の安全教室で見せたような笑顔が世の中に広がっていくことでしょう。障害の有無にかかわらず、児童一人一人が自分でやりたいことを体験し、笑顔で生活することができる社会になってほしいと、保護者の誰もが願っていることと思います。

 

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学校教育法が改正された平成19年から対象の児童生徒数の増加が加速している
(文部科学省HP掲載資料より)

 

来年の春になれば、私は地元自治体に戻りますが、その後はB&G財団で培った経験を活かし、障害のある子供たちも参加できるような、簡単かつ楽しいスポーツ・自然体験活動などの事業に携わっていきたいと考えています。

また、この私のレポートが、多くの人々にとって特別支援教育について知り、考えていただけるきっかけになれば幸いです。

 

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こんな素敵な笑顔を増やしていきたい

 

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注 1:
発達障害とは自閉症やLD(学習障害)、ADHD(注意欠陥多動性障害)など、生まれつき脳の一部機能に障害があるものをいう。
詳細:http://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_develop.html(厚生労働省HP)
 
注2:
危険だからと言って水辺から遠ざけるのではなく、「自分の命は自分で守る」意識と技能を身に付けながら自然体験活動に興味を持ってもらう、B&G財団が開発した安全教育プログラム。全国の小学校、B&G海洋クラブなどで実践されている。
 
注3:
単独行動を避け、二人(以上)が組んでお互いの安全に気を配りながら行動するシステム(その相方のことも指す)。ダイビングなどのアウトドア活動で用いられている。
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